夏野菜の色が秘めるチカラ
暑い、暑い夏。青果店の店先には、太陽をいっぱいに受けてみずみずしく育ったトマト、キュウリ、ナス、パプリカなどの色とりどりの夏野菜が並ぶ。
見ているだけで元気がもらえそうなカラフルな夏野菜ですが、実は野菜や果物の色には意味があり、植物が生きるための力になっています。
活性酸素と戦う野菜たち
夏に気になる強い紫外線は、私たちにとって日焼けやシミの原因となり、体内で「活性酸素」を増やします。
活性酸素が増えすぎると、体の中で悪さをするように。細胞を酸化させてがん細胞を作り出したり、悪玉コレステロールを酸化させて血管をつまらせ、動脈硬化の原因になったり……。
活性酸素による酸化は、老化にも密接に関係するため、美容を気にする女性としても避けたいところです。
実は、野菜や果物も、強い紫外線の下でつねに活性酸素と戦いながら生きています。
植物は活性酸素などの害から身を守るために、「フィトケミカル」とよばれる天然の化学物質を作り出します。「機能性成分」として注目されるフィトケミカルは、食物として摂れば、体内で活性酸素を抑えるはたらきがあり、生活習慣病や老化の予防効果が期待できるのです。
野菜・果物の色
野菜や果物の色の多くは、フィトケミカルの一種の色素成分によるものです。
たとえば、赤いトマトやスイカに含まれる「リコピン」。
リコピンはフィトケミカルのうち、「カロテノイド」と呼ばれる色素成分の一つで、活性酸素を除去する抗酸化力が特に強いことで知られています。
赤トウガラシ、パプリカ、赤ピーマンなどの赤はカロテノイドのうち「カプサンチン」とよばれる色素で、リコピンと同じくらいの抗酸化作用があります。
野菜・果物の橙色もカロテノイドの仲間で、ニンジン、カボチャ、赤肉メロン、緑黄色野菜全般の「β-カロテン」や、マンゴーやトウモロコシなどの「ゼアキサンチン」などによるもの。抗酸化作用のほか、皮膚や粘膜を丈夫にし、風邪を予防したり、肌をしっとりさせたりといった効果も期待できます。
赤ワインなどの「ポリフェノール」もよく知られていますが、これもフィトケミカルの一つで、赤~青色の色素やアク、渋みの成分。ブドウやナス、赤紫蘇、ブルーベリーの紫色は、ポリフェノールの一種「アントシアニン」によるものです。
そして、野菜の緑色は、植物が光合成をおこなうための葉緑体として知られる「クロロフィル」の色。ポリフェノールやクロロフィルも抗酸化作用があり、生活習慣病の予防や美容に効果があるといわれています。
色の濃い野菜は油と一緒に
野菜や果物の色がカラフルなのは、植物が強く生きぬくための工夫です。そして、私たちはこの色とりどりの野菜をおいしくいただくことで、その恩恵を受けているのです。
いつも不思議に思うのは、旬の野菜や果物は、その季節に私たちの体が必要とするものをきちんと持っているということ。抗酸化作用だけでなく、夏の野菜や果物は体の火照りをしずめ、汗で失った水分を補ってくれる、まさに夏の恵みなのです。
最後に、夏野菜を調理するときのワンポイントアドバイスを。
赤やオレンジ、黄色などのカロテノイドは脂(あぶら)に溶けるので、トマトやパプリカなどの野菜は、そのままで食べるよりもドレッシングをかけたり炒め物にしたりして、油と一緒に摂る方がよく吸収されます。一方、ポリフェノールの紫やクロロフィルの緑は水に溶けやすいので、できれば味噌汁や赤紫蘇ジュースのように汁ごといただくのがおすすめ。(クロロフィルの緑は水溶性だけれど、緑の野菜全般にはカロテノイドのβカロテンも含まれるので、色の濃い野菜はいずれも少量の油と一緒に摂るとよいでしょう。)
今年の夏も、カラフルな野菜たちからパワーをもらいたいですね。
過去に掲載していただいた「ハレタル」より
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