道具を使う愉しみ—「いまの自分」に合ったもの選び

以前から、ものはこだわって選ぶほうでした。必要なものでも、本当に気に入ったものに出会うまでは、少し不便でも持たずに過ごしたり、惹かれるものを見つけても、一度帰ってよく考えたり。

けれど、そうやってこだわって選んだつもりでも、時には飽きてしまったり、使いこなせなかったりして、手放してしまったものもたくさんありました。

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苦い思いをしてこそわかること

色々なものを手にしては、結局使わなくて手放してしまうこともある。そんなとき、罪悪感や「無駄にしてしまった」という苦い思いを経験する。もちろん無駄なんてせずに済めばいいけれど、もしかしたら、こんな無駄を経験してはじめて、自分にとって本当に必要なものがわかってくるのかもしれません。

最近になってようやく自分の好きなものがはっきりわかり、もの選びに迷わないようになりました。

わたしが惹かれるのは、無駄を削ぎ落としたような佇まいのものです。

調理器具では、スイッチを入れれば誰にでも同じような料理ができてしまうものよりも、少し手をかける必要のあるものがいい。手入れの方法が煩雑で、苦手な説明書を読まなければならないような電化製品は少しずつ減り、シンプルに使えるものが増えました。

季節に、素材に、道具に耳を傾ける|カネフサ製陶のごはん鍋

毎日ごはんを炊いているカネフサ製陶のごはん鍋は、火加減いらずのすぐれもの。炊くお米の量に合わせて既定の時間強火にかけたら、あとは15分ほど蒸らすだけでごはんが炊き上がります。

部屋の温度や水の冷たさを考慮して火にかける時間を調節し、「新米だとお米の水分が多いから水は少なめがいいかな」と考えるのもなかなか楽しい。そして、グツグツいう音に耳を傾ける。ファーっと噴き出す湯気を見て、頃合いを見計らって火を止めれば、ごはんのおいしさが違ってきます。

土鍋でごはんを炊くようになってずいぶん経ちますが、ようやく私なりの上手な炊き方がわかってきたように思います。そして何より、「私が炊いている」という感覚がいいのです。

手をかけることを愉しめる道具たち|辻和金網の焼き網、ケメックスのコーヒーメーカー

ごはんもガスの火で炊いていますが、パンもトースターの代わりに焼網を使ってガス火で焼きます。ただ焼くだけだけれど、火加減とひっくり返すタイミングで、好みの感じに焼き上げることができます。

あっという間に焼けるので、ぼーっとしていると焦がしてしまうこともありますが、強めの火で焼くことで、まわりはカリッと、中はふんわりとした食感に。上手に焼けたトーストにバターを塗れば、それだけでごちそうです。

コーヒーメーカーも、昔カタログギフトで手にした電器製のモノは、早くに手放してしまいました。今では、コーヒーにはハンドドリップでいれるケメックスのコーヒーメーカーを使っています。

専用の紙フィルターを使ってコーヒーを入れるのですが、豆の挽き具合、お湯の注ぎ方によって味も香りも変わってきます。ゆっくりとお湯を注ぎ、コーヒーの香りにつつまれる時間を愉しむ。使い終わったコーヒーメーカーは、さっと洗うだけという簡単さも魅力です。

電化製品ではない道具を選ぶと、キッチンの作業スペースにも余白が生まれます。わが家では、つねに電気炊飯器やトースター、コーヒーメーカーを置いておく必要がないため、広い作業スペースを確保できています。

日々の道具は、それを使うことで生まれる空間や、道具を使うこと自体を愉しめることが、今のわたしの理想です。

ただ、必要な道具は人によって違うはず。仕事をしていて時間が取れないなら、道具を使うことで時間が生まれるようなもの選びが第一になるかもしれません。

どのような選択においても、自分に本当に必要なものを見極めることが大切なのだと思います。

以前掲載していただいた「ハレタル」のコラムより

暮らしが変わった今のもの選び

この記事を書いた2018年から月日が流れた2026年現在、わたしはその後オープンしたカフェの仕事を続けています。

当時使っていたごはん鍋は、残念なことに割れてしまいました。
しばらく圧力鍋で炊いていた時期がありましたが、仕事をして帰ってすぐに食事の支度をするとき、わたしがいないお昼にご飯を炊く必要があるときは、予約や保温の機能がほしくなり、今は炊飯器を使っています。

パンを焼くのも、時短のために一度に4枚食パンが焼ける「アラジン」のトースターを使っています。
焼き網は、お餅を焼くときなど、ここぞというときに使うので、手に取りやすいところに吊り下げています。

当時も、「そのときの自分に合ったもの選びを」と書いていますが、まさにその通りなのだと、今、実感しています。
暮らしが変われば、選ぶ道具も変わる。それでも、「今の自分に合ったものを選ぶ」という考え方だけは、変わらずわたしのもの選びの軸のひとつであり続けています。

この記事は当時の視点のまま
読みやすいように再編集しています

 

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