夏の実りを迎えに、勝沼へ。

夏の実りを迎えたくて、夫と二人、勝沼に向かいました。

最初に訪れたのは「ぶどうの丘」。
展望台から眼下に広がるのは、夏の日差しをいっぱいに浴びたぶどう畑の、青々とした甲州盆地の景色でした。

目次

土地のワインと、それに寄り添うパン

ワインショップでは、地元のワインと、ぶどうの果汁の重みの残る濁ったストレートジュースを手に取りました。

そして、ワインの味わいを引き立ててくれるような、飾らないリーンなパンも購入しました。
選んだ食材を後でどんなふうに合わせるのか、食卓の風景を思い浮かべるのも、旅の楽しみの一つです。

夏の空気と、熱々のほうとう

お昼は「慶千庵」さんで地元の名物、「ほうとう」をいただくことにしました。

蚊取り線香の香りとうだるような暑さ。和風庭園の青々とした木立を眺めながら順番を待ちます。

ようやく案内された冷房の効いた部屋で、運ばれてきた熱々のほうとうに向き合う。
汗をかきながら敢えてあたたかい滋味を味わうのは、真夏だからこその醍醐味です。

ぶどう販売店 阪本農園さんを訪れる

この日の一番の目的は、おいしい果物を探すことでしたが、実はこの時期、山梨の桃はちょうど終わりを迎えるところでした。
そこで、旬のぶどうを求めて「ぶどう販売店 阪本農園」さんを訪ねることにしました。

店頭に立ち寄ってみると、そこにぶどうの姿が見当たりません。
「シャインマスカットにはまだちょっと早くてね、」
奥から出てきたオーナーの方が見せてくださったのは、一枚のぶどうの一覧表でした。

作り手の方の物語を垣間見る

今の時期、主役は黒ぶどうでした。
「ブラックビート」はゴルフボールくらいの大きさを目指して育てていること、「甲斐キング」はもともと「ブラックキング」という名前で、海外での販路も見据え、山梨の名産だとひと目でわかるよう2年前に改名されたこと、誰もが食べやすいよう、全て種無しを作っていることなど、作り手さんの想いを伺いながら、ぶどうを選ぶ時間は贅沢なひと時でした。

「今から畑に採りに行きましょう。」

思いがけない言葉に、思わず顔を見合わせました。

案内された畑には、美しく実った房が遠くまで広がっています。
ぶどうの木は、少し腰をかがめる高さに仕立てられていました。

「妻でも作業しやすいようにしてあるんです。」

そう教えていただいた一言から、毎日積み重ねられている仕事の風景を少しだけ垣間見た気がしました。

しっかりと色づいたぶどうをじっくりと見比べ、自分の手でそっとハサミを入れさせてもらいました。

食卓で味わう、それぞれの個性

家に持ち帰り、テーブルに並べたぶどうたちはとても立派。旅先で見た時よりもひと回り大きく見えました。

早速比較してみると、ブラックビートはなるほど大きく、光沢とハリのある実はまるで「あんこ玉」のよう。さっぱりとした甘さと爽やかな余韻が残ります。

甲斐キングは、巨峰を思わせる深いコクがありながら、巨峰よりも大きくしっかりとした実で、皮が薄くて食べやすい。

ナガノパープルは、柔らかい皮ごと食べられ、濃厚な甘さが特徴。

ピオーネは甘味と酸味のバランスがよく、多汁で食べ慣れたおいしさでした。

「私はやっぱり甲斐キングのコクが好き。」「僕はこれ。」「私はナガノパープルかな。」
家族が自分の「推し」を語り合う。

旅の途中で触れた作り手の方の熱量や、旅先の夏の空気が一房のぶどうとしてわが家の日常の食卓へ。
食べ終えた皿には、ぶどうの皮だけが残っていました。

季節は、迎えに行くと、暮らしの中に少しだけ長く留まってくれるのかもしれません。

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