
使い込むほどに油が馴染み、火を入れるたびに深い色合いへと変化していく。
惹かれるのは、そんな「育てる」愉しみがある道具です。
中でも鉄のフライパンは、この先もずっと使い続けていくであろうものの一つ。
フッ素樹脂加工の軽やかさや手入れの手軽さとは異なる時間を歩む道具ですが、焦げ付きやサビが生じた時も、磨き直すことで何度でも原点に戻せる強靭さがあります。
鉄のフライパンの特徴と、手入れを重ねる心地よさ
鉄のフライパンで焼くと、表面はカリッと香ばしく、中は水分を保ったままふっくらと仕上がります。余計な手出しをしなくても、食材のうまみを閉じ込めて、おいしさをしっかりと引き出してくれる道具です。
鉄分を摂る助けになるともいわれていて、ささやかなおまけのようで、嬉しいところです。
けれど、真の魅力は「何度でも蘇る」という強靭さにあるのかもしれません。
鉄の調理道具は、焦げ付きや錆びさえも、磨き直すことでリセットできるのです。
焦げつきや錆びが気になるときの再生の工程は別の記事でまとめています。
役割で選ぶ、わが家の鉄の道具たち

わたしの鉄のフライパン
左上から時計回りに、成田さんのフライパン(25㎝)、30㎝の中華鍋、卵焼き器、南部鉄のミニパン、30cmのパエリヤパン。
気づけば増えてしまったけれど、どれも台所の一軍の、手放せないものばかり。
それぞれに役割があり、日々の台所しごとで自然と手が伸びます。

肉や魚をじっくり焼くときは成田さんのフライパン。軽くて小回りも利くので、毎日使っています。
炒め物だけではなく、揚げ物にも中華鍋を。安定感には少し気を遣いますが、底がまるくなっているので、少量の油で揚げ焼きにしたいときにも深さができて使いやすい。大きく深い鍋だから、周りへの油ハネも最小限で済んでいる気がします。
ミニパンはお弁当や朝食の小さなおかず作りに。アヒージョやバーニャカウダ、チーズフォンデュのように、食卓で使うこともあります。
パエリヤパンは、その名の通りパエリヤはもちろん、お好み焼きや大きな魚を焼くときにも。
熱々のまま食卓に出しても、飾らないのにどこか絵になる佇まいが好みです。

「利便性」と「愛着」を天秤にかけない選び方
フッ素樹脂加工のフライパンは軽くて手入れも楽で、現代の暮らしにおいて、確かに正解の一つだと思います。
けれど、コーティングは少しずつ剥がれていき、いずれは買い替えが必要になります。
鉄製はその逆で、手をかけながら長く付き合っていく道具。
大変そうだと思われるかもしれませんが、慣れてしまえば扱いも難しくありません。
「使い捨てのもの」と「繰り返し使うもの」。
「使い捨て」を否定するのではなく、道具ごとに自分の心地よい距離感を選びながら、暮らしの中で自然に使い分けていく。
そういう感覚が、今の自分にはしっくりきています。
それでもフライパンに関しては、鉄を使い続けていきたいと思っています。
手をかければ応えてくれる道具だからこそ、自分で管理できる安心感がある。
消耗品としてではなく、一生ものとして向き合う心地よさがここにはあります。
